高千穂行

3月の高千穂は雲に覆われつつあった。 午前中に韓国岳に登って、午後から高千穂に登ろうというのは無謀であった。 天気予報は宮崎の雨を告げている。
這々の態で帰ってきた私をビジターセンターのおばさんは優しく迎えてくれた。 「いよいよ雲が出て来ましたから、どうかと思っていたんですよ」 見れば、さっきまで私がいた御鉢のあたりは完全に灰色の雲の中である。 とりあえず御鉢までは登ってみたが、風が強いのと、ガスに巻かれるようだったので、一目散に逃げ帰ったのだ。もはや山の天辺あたりは、ちょっとの視界も無いだろう。
2011年の新燃岳の噴火によって砂礫が斜面に堆積し、ずいぶん登りにくくなったということだ。たしかに高千穂の斜面は、こまかな軽石で敷き詰められてずるずると滑りはなはだ登りにくかった。 私は雨の降り始めた高千穂河原から退散し、風呂に入って寝た。